【授業実況】2025/04/26 状態変化と油脂・合成洗剤|高校化学で頻出の性質と判別法
この記事を読んでわかること
- 状態変化グラフの意味を説明できる
- 石鹸分子の構造と洗浄作用を理解
- 硬水中での石鹸の弱点を説明できる
- 合成洗剤の特徴と利点を整理できる
- 入試頻出の応用問題に対応できる
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状態変化のグラフと熱エネルギー
「横ばいの部分は何を意味するのか?」と入試でよく問われます。
状態変化のグラフでは、温度が一定でも熱が加わると固体から液体、液体から気体への変化が進みます。
- 固体だけのとき → 温度上昇(右肩上がり)
- 融解・蒸発のとき → 温度は横ばい
- 気体だけのとき → 再び温度上昇
このように「温度変化」と「物質の状態変化」を切り分けて考えることが大切です。
📘 石鹸の分子構造と洗浄メカニズム
石鹸は〇親水基(–COO⁻)と〇疎水基(炭化水素鎖)をあわせ持つ分子です。
水に溶けると、親水基は水と相互作用し、疎水基は油汚れに結合します。
このとき形成されるのがミセルです。
ミセルは疎水基が内側に集まり、油汚れを包み込み、外側の親水基が水と馴染むことで汚れを分散させます。
この仕組みによって「水と油が混じり合う=乳化作用」が可能になります。
💡思考のヒント:
水が油を弾くのは、水分子が極性分子、油が無極性分子だからです。石鹸はその橋渡し役となっています。
📘 石鹸の弱点と合成洗剤の登場
石鹸には便利さと同時に弱点があります。
- 硬水や海水中のMg²⁺・Ca²⁺と反応 → 金属石鹸の沈殿を生成し、泡立ちが悪化
- 弱塩基性 → 絹や羊毛などの動物繊維を傷める
この欠点を克服するために開発されたのが合成洗剤です。
📘 合成洗剤の特徴
- 硬水中でも沈殿せず、泡立ちがよい
- 中性に近く、繊維や肌を傷めにくい
- 石油化学的に合成され、多様な構造を持つ
💡今日の学び × 思考のヒント
- 状態変化では「温度変化」と「相変化」を分けて考える
- 石鹸は「水と油の橋渡し役」として働く
- 硬水では石鹸が機能低下 → 合成洗剤の登場
演習問題
問1 状態変化グラフについて、以下を答えよ。
(1) 横ばい部分が示す意味は何か。
(2) B点の温度がA℃、C点が100℃であるとき、B–Cの区間の物質の状態を答えよ。
解答例
(1) 融解や沸騰などの相変化の進行。
(2) 液体のみが存在。
問2 石鹸が硬水で使いにくい理由を説明せよ。
解答例
石鹸の–COO⁻がCa²⁺やMg²⁺と反応して水に溶けにくい金属石鹸をつくり、泡立ちが悪くなるから。
問3 次の油脂トリステアリン(C₃H₅(COOC₁₇H₃₅)₃)をNaOHでけん化したとき、生成する石鹸分子とグリセリンの物質量比を答えよ。
解答例
油脂1モルから石鹸3モル、グリセリン1モルが生成。よって比は 3:1。
問4 合成洗剤の利点を説明せよ。ただし、「硬水」「親水基」の語を用いること。
解答例
合成洗剤の親水基はスルホ基や硫酸エステル基であるため、硬水中でもCa²⁺やMg²⁺と沈殿をつくらず、強い洗浄力を維持できる。
📘 油脂とけん化反応
油脂はグリセリンと高級脂肪酸のエステルです。
例えば、ステアリン酸とグリセリンからはトリステアリンが生成します。
油脂を強塩基(NaOH水溶液)で加熱すると、加水分解されてグリセリンと脂肪酸のナトリウム塩(石鹸)が得られます。
この反応を けん化反応 と呼びます。
📘 合成洗剤と分子設計の工夫
合成洗剤は石油化学を基盤にして開発され、
- アルキルベンゼンスルホン酸塩
- アルキル硫酸エステル塩
などの構造を持ちます。
これらは親水基がスルホ基や硫酸エステル基であるため、硬水中でも沈殿せずに強い洗浄力を発揮します。
まとめ
- 状態変化のグラフは「温度変化」と「相変化」を分けて考える
- 石鹸はミセルを形成し、水と油を乳化させる
- 石鹸は硬水や塩基性に弱い → 合成洗剤で克服
- 油脂のけん化反応は「石鹸生成の基本プロセス」
- 合成洗剤は硬水中でも沈殿せず、幅広く利用可能
👉 次の記事では「油脂の構造と不飽和度」「ヨウ素価の計算」を扱い、入試問題の演習に進みます。
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