【授業実況】2025/05/13 ヨウ素価の計算と立体異性体の基礎【高校化学・入試頻出】
この記事を読んでわかること
- ヨウ素価の定義と計算の手順
- 油脂の二重結合数の数え方
- メソ体の特徴と見分け方
- 入試頻出の計算問題の解法プロセス
- 誤答を防ぐためのチェック方法
要約:ヨウ素価は二重結合数を反映し、立体異性体の理解にはメソ体の概念が必須です。
「ヨウ素価ってどう計算するの?」「メソ体ってただの異性体じゃないの?」そんな疑問を解決するのが今回のテーマです。油脂分子に何molのヨウ素が付加するかを計算するプロセスと、不斉炭素を持ちながら鏡像異性体と同一になる特殊なメソ体を整理していきます。
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ヨウ素価とは?入試に頻出する計算テーマ
ヨウ素価とは「油脂100gに付加するヨウ素の質量」を示す値です。これは二重結合の数に比例し、油脂の乾きやすさ(乾性油かどうか)の目安になります。二重結合が多いほど酸素と結合しやすく、塗料や乾性油の性質に直結するため入試でよく問われます。
💡今日の学びのヒント
・ヨウ素価が高い=二重結合が多い=乾きやすい油脂
・ケン化価と混同しやすいので要注意
ヨウ素価の計算手順を段階的に追う
例としてリノール酸(C17H31COOH)を含む油脂の計算を見てみましょう。
- 分子量を求める
リノール酸の分子量を計算すると約280。油脂(トリグリセリド)は3分子分なので分子量は約878となります。 - 二重結合数を数える
リノール酸1分子には二重結合が2個あるので、油脂全体では6個となります。 - 付加するヨウ素のmol数
C=C 1個につきI₂ 1molが付加するので、油脂1molに対してI₂が6mol必要です。 - ヨウ素価の算出
1molの油脂に6molのI₂(質量約1524g)が付加。
油脂878gあたり1524gのI₂ → 油脂100gあたり174gのI₂。
したがってヨウ素価は 174 となります。
💡よくある誤答
・油脂の分子量を求め忘れる
・二重結合数を脂肪酸1分子分で答えてしまう
・ヨウ素価に単位をつけてしまう(正しくは数値のみ)
立体異性体とメソ体の概念
次に立体異性体です。分子式は同じでも、原子の立体的な配置が異なる化合物を立体異性体といいます。
📘 光学異性体とメソ体の違い
- 光学異性体:不斉炭素を持ち、鏡像異性体が別物として存在する。旋光性を示す。
- メソ体:不斉炭素を複数持つが、分子内に対称面があるため鏡像異性体が同一物質となる。旋光性を示さない。
つまり「不斉炭素がある=必ず光学活性」とは限らず、メソ体が例外になるのです。
💡思考のヒント
・「分子内対称性があるか?」を常に確認
・鏡に映したときに本当に別物かどうかを模型でイメージすると理解が早い
演習問題
リノール酸(C17H31COOH)を3分子含む油脂のヨウ素価を求めよ。
不斉炭素原子を2個持つ酒石酸の立体異性体を考えよ。鏡像異性体とメソ体を分類せよ。
油脂1.0gをヨウ素溶液と反応させたところ、0.0040molのI₂を消費した。この油脂のヨウ素価を求めよ。
計算練習チェックリスト(ケン化価との比較・落とし穴まとめ)
✅ ヨウ素価とケン化価の違い
- ヨウ素価:二重結合の数を反映(油脂100gに付加するI₂の質量)
- ケン化価:油脂1gを完全にケン化するのに必要なKOHのmg数(分子量に依存)
👉 ポイント:
・ヨウ素価=「二重結合の有無」
・ケン化価=「分子量の大小」
✅ よくある落とし穴
- 単位を書いてしまう(ヨウ素価は数値のみ)
- 二重結合数を1分子分で止めてしまう(×3を忘れない)
- ケン化価と混同する
- 油脂の分子量を正しく求めない(目安は約880前後)
💡 計算練習の流れ(最重要ポイント)
・分子量を正確に押さえる
・二重結合数を数える
・ヨウ素価とケン化価を区別する
・解答は「整数・単位なし」で書く
まとめと次の単元への導入
ヨウ素価は油脂の二重結合数を反映し、乾性油の判定に用いられる重要な数値です。入試では分子量と二重結合数を正しく押さえて計算することが求められます。
また、立体異性体の理解には「不斉炭素=必ず光学活性」と思い込まないことが大切で、メソ体の存在がその例外になります。
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