化学平衡の基本から入試レベルの応用までを網羅。濃度平衡定数Kc・圧平衡定数Kp・弱酸の電離定数Kaの計算手順、導出方法、ルシャトリエ原理の平衡移動の予測法を例題と演習で詳しく解説。
読んだ後に学びがあったと感じた方は、♡をタップしていただけると嬉しいです。
化学平衡は、正反応と逆反応の速度が等しくなった状態を指します。濃度平衡定数Kc・圧平衡定数Kp・電離定数Kaを理解すれば、入試問題の大半に対応できます。本授業では、基礎式の導出から応用計算、平衡移動の予測まで体系的に学びました。
化学平衡の概要と学習のねらい
授業冒頭では、化学平衡の主要8テーマ(濃度平衡定数、圧平衡定数、電離平衡、加水分解、緩衝液、溶解度積、沈殿滴定、モール法)を確認しました。平衡定数Kは温度一定で不変ですが、圧力や濃度で平衡位置は変化します。この性質を利用して、工業的にも生成物収率を高めます。
濃度平衡定数Kcの考え方と計算
📘 基本式と係数の扱い方
可逆反応 aA + bB \rightleftharpoons pP + qQ における濃度平衡定数は、
K_c = \frac{\left[ P \right]^p \left[ Q \right]^q}{\left[ A \right]^a \left[ B \right]^b}係数は指数として扱います。モル濃度は必ず mol/L 単位で計算し、式への代入時は括弧内を\left[ \right]で明示します。
📘 例題と計算手順
N₂ 2.0 mol と H₂ 5.0 mol を10 L容器に入れ、NH₃ 2.0 molを生成した平衡定数を求める。
変化量表を作成し、モル濃度を代入して計算すると Kc = 50 (mol/L)⁻² となります。
圧平衡定数KpとKcの関係
📘 Δnの定義と変換式
気体反応では、分圧を用いた平衡定数Kpも便利です。Δnは「生成物側の気体モル数合計 − 反応物側の気体モル数合計」。変換式は以下の通りです。
K_p = K_c (RT)^{\Delta n}ここでRは気体定数、Tは絶対温度(K)。Δn=0ならKp=Kcとなります。
📘 応用例題
与えられたKcとΔnからKpを計算する問題で、温度が変化した場合の影響も合わせて確認しました。
弱酸の電離平衡と電離定数Ka
📘 Kaの導出過程(近似の使い方)
酢酸の電離:\mathrm{CH_3COOH + H_2O \rightleftharpoons CH_3COO^- + H_3O^+}
水の濃度はほぼ一定として式を簡略化します。電離度α≪1なら 1−α ≈ 1 と近似でき、
暗記ではなく、必ず初期濃度→変化量→平衡濃度の流れで理解します。
📘 pH計算例
Kaと初期濃度からpHを求める例題を通して、近似条件の確認方法を学びました。
平衡移動(ルシャトリエ原理)
📘 濃度変化
N₂やH₂を加えると右向き、NH₃を加えると左向き。
📘 圧力変化
加圧は気体モル数減少側、減圧は増加側へ移動。
📘 温度変化
吸熱方向は温度上昇で有利、発熱方向は低温で有利。
📘 複合操作例
N₂+3H₂⇄2NH₃(ΔH<0)で加圧+冷却すると右向きに大きく移動。
演習問題
📘 第1題(授業問題)
H₂ 1.0 mol と I₂ 1.0 mol、V=L の密閉容器でK=64。平衡時の物質量を求める。
解法の流れ:変化量x mol→平衡濃度代入→式整理で x=0.80 mol。
結論:H₂=0.20 mol、HI=1.6 mol。
誤答パターン:体積Vを式に入れ忘れる/係数2の影響を無視。
解法のコツ:変化量表は必ず係数反映、分母・分子のVは簡略化前に書く。
📘 第2題(類題)
CO₂ 2.0 mol と H₂ 2.0 mol を5.0 L容器に入れ、COとH₂Oを生成。K=1.5。平衡時COが何mol生成するか。
解法:変化量y mol、平衡濃度代入→二次方程式解法→y≈1.2 mol。
結論:CO=1.2 mol、H₂O=1.2 mol。
よくある誤答パターンと回避のコツ
・係数を平衡式に反映せず濃度を直接代入。
・Δnの符号を逆にしてKp計算。
・α≪1の近似条件を満たさずに1−α≈1とする。
💡コツ:式の形を毎回書き出し、単位・係数・体積を確認する習慣をつける。
授業のまとめ
・Kcは濃度、Kpは分圧で定義。Δnを用いて相互変換可能。
・Ka導出は近似条件と水濃度一定の理解が必須。
・ルシャトリエ原理は濃度・圧力・温度の3要素+複合操作で考える。
・平衡計算は変化量表→平衡濃度→代入の3ステップで安定。
この記事、どう感じましたか? 感想もらえると嬉しいです(^^)