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【授業実況】2025/07/25 化学平衡/電離平衡と溶解度積

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📘 理論化学を「しくみ」で学びたい方へ

※この記事のテーマ(化学平衡)は、理論化学の土台の上に成り立っています。
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  • 問題文の条件から対象とする平衡式を正しく選択する
  • 溶解度積とイオン積の大小関係で沈殿の有無を判断する
  • pHによるイオン種変化を反応条件に直結させる

電離平衡と溶解度積は別の単元に見えますが、両者は実際の沈殿や溶解条件を考えるうえで密接に関わります。本日はまず電離平衡の条件判断から入り、次に溶解度積Kspの定義と計算方法を学び、沈殿生成の有無をイオン積との比較で判定する方法を習得しました。さらに、pHによるイオン種の変化が沈殿条件に与える影響を確認し、最後にモール法による滴定で複数沈殿の順序を考える実例に取り組みました。

目次

条件文の情報を見落とさず、理論と計算を結び付ける力を養う回です。

📘 リン酸水溶液における電離平衡の絞り込み

リン酸H₃PO₄は多段階で電離しますが、pH条件によって主に存在するイオン種が変わります。

今回の問題では「pHが4〜10の範囲ではH₂PO₄⁻とHPO₄²⁻が主に存在し、H₃PO₄とPO₄³⁻は無視できる」と明示されていました。この条件から、第2段階の電離平衡

H₂PO₄⁻ ⇄ H⁺ + HPO₄²⁻

のみを対象に計算を進めます。濃度と電離定数Kから、水素イオン濃度は H⁺ = √(K・C) で求められます。

💡 コツ:問題文の「主に存在」を見落とさず、不要な平衡式を外すことで計算が簡潔になる。

📘 溶解度積Kspの定義とその意味

溶解度積は難溶性塩の飽和水溶液中における各イオン濃度の積で、温度一定では一定値をとります。

例えばAgClの溶解平衡

AgCl(s) ⇄ Ag⁺(aq) + Cl⁻(aq)

では Ksp = [Ag⁺][Cl⁻] です。Kspが小さいほど、その塩は溶けにくいことを意味します。平衡式には固体は現れず、溶液中のイオンのみを扱う点に注意します。


💡 コツ:Kspは「溶ける量そのもの」ではなく「平衡時のイオン濃度の積」。

📘 イオン積とKspの比較による沈殿条件判定

実際の混合溶液では、現在のイオン濃度の積Q(イオン積)をKspと比較します。

Q > Ksp なら沈殿が生成し、Q < Ksp なら沈殿は生じません。例として、[Ag⁺]=1.0×10⁻³ mol/L、[Cl⁻]=1.0×10⁻³ mol/Lの混合ではQ = 1.0×10⁻⁶で、AgClのKsp(=1.7×10⁻⁸)より大きいため沈殿が生じます。混合時は体積の変化で濃度が半分になるケースなど、濃度計算の前処理が必須です。

💡 コツ:混合条件を反映させた濃度でQを計算する。

📘 pH変化が沈殿条件に与える影響

硫化物沈殿はpHに強く依存します。H₂Sの電離平衡

H₂S ⇄ HS⁻ + H⁺
HS⁻ ⇄ S²⁻ + H⁺

により、酸性条件ではS²⁻濃度が減少します。そのため、Kspが比較的大きいZnS(2.2×10⁻¹⁸)は酸性条件では沈殿しにくくなります。一方、Kspが極めて小さいCuSは酸性条件でも沈殿可能です。この違いはKspの桁数で理解できます。

📘 モール法による沈殿滴定の原理と順序

モール法では、試料中のCl⁻をAgNO₃標準溶液で滴定します。

AgClが先に沈殿し、過剰のAg⁺が生じた瞬間にCrO₄²⁻と反応して赤褐色のAg₂CrO₄沈殿が現れる点が終点です。AgCl(Ksp=1.7×10⁻⁸)とAg₂CrO₄(Ksp=3.3×10⁻⁵)を比較すると、よりKspが小さいAgClが先に沈殿する理由が明確になります。

📘 授業で取り上げた練習問題

問題1:リン酸水溶液の主要イオン種判定
pHが5.0のリン酸水溶液では、主にどのイオン種が存在しますか。H₃PO₄のpKa₁=2.15、pKa₂=7.20、pKa₃=12.35。

解答:H₂PO₄⁻とHPO₄²⁻

解説:pHがpKa₁より十分大きくpKa₂より小さいため、第一段階はほぼ完全に解離し、第二段階が平衡状態。したがってH₂PO₄⁻とHPO₄²⁻が主に存在します。

問題2:AgCl沈殿の有無判定
100mLの1.0×10⁻³ mol/L AgNO₃水溶液と、100mLの1.0×10⁻³ mol/L NaCl水溶液を混合しました。AgClのKsp=1.7×10⁻⁸。沈殿は生じますか。

解答:生じる

解説:混合により[Ag⁺]=[Cl⁻]=5.0×10⁻⁴ mol/L。イオン積Q=2.5×10⁻⁷で、Kspより大きいため沈殿が生成します。

問題3:pH変化によるZnS沈殿条件
ZnSのKsp=2.2×10⁻¹⁸、飽和H₂S水溶液におけるS²⁻濃度は中性で1.0×10⁻⁵ mol/L、pH2で1.0×10⁻¹⁷ mol/Lとします。[Zn²⁺]=1.0×10⁻⁶ mol/Lの場合、どの条件で沈殿しますか。

解答:中性で沈殿する

解説:中性時のQ=1.0×10⁻¹¹>Kspで沈殿。pH2ではQ=1.0×10⁻²³<Kspで沈殿しません。

問題4:モール法の沈殿順序
AgClとAg₂CrO₄のKspがそれぞれ1.7×10⁻⁸、3.3×10⁻⁵である場合、AgNO₃滴定ではどちらが先に沈殿しますか。

解答:AgCl

解説:Kspが小さい方が先に沈殿。AgClはKspが小さいため先に沈殿し、過剰のAg⁺が生じた後にAg₂CrO₄が沈殿します。

  • 問題文条件から対象平衡を正しく選定する
  • QとKspの比較で沈殿の有無を判断する
  • pHの影響はイオン種の変化を通じて沈殿条件に直結する
  • pH条件により主要イオン種と対象平衡式が決まる
  • 溶解度積は温度一定で一定値
  • イオン積とKspの大小関係で沈殿の有無を判断
  • 酸性条件ではS²⁻が減少し沈殿条件が変わる
  • Kspの小さい沈殿が先に生成する(モール法の原理)

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次の記事>>(後日追加予定)

📘 理論化学を「しくみ」で学びたい方へ

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