この記事を読んでわかること
- 硫酸製造の接触法の反応過程
- 触媒酸化バナジウムの役割を理解
- 物質量計算の係数比を使える
- 濃硫酸の安全な希釈方法を説明できる
- 工業的製法の入試出題形式を把握
要約
要約:硫酸の接触法は、S→SO2→SO3→H2SO4の流れを押さえることがポイント。酸化バナジウム(V2O5)が触媒として働く。工業的製法の計算は「係数比で順に換算」するのが基本で、例題を通じて入試問題に対応できるようになる。さらに、濃硫酸の取り扱いでは「水に硫酸を加える」安全ルールが必須である。
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📘 導入:工業的製法は入試の定番テーマ
「接触法って、反応式を丸暗記しないといけないの?」と不安になる人が多いです。しかし、SからH2SO4までの流れさえ押さえれば、式はその場で書けるようになります。この記事では、接触法の仕組みと計算方法を例題つきで整理します。
📘 硫酸の接触法の流れ
工業的製法の中でも代表的なのが硫酸の接触法です。反応の骨子は次の通りです。
S → SO2 → SO3 → H2SO4
触媒には酸化バナジウム(V2O5)が使われます。装置図を覚えるより、この流れを理解することが重要です。
💡今日の学び:ゴール(H2SO4)とスタート(S)を結ぶ「中間物質」をセットで覚えると暗記が楽になります。
📘 工業的製法の計算パターン
工業的製法の計算は次の2パターンで出題されます。
- 原料から得られる製品の質量を求める
- 製品を得るのに必要な原料の量を求める
📘 例題:16kgの硫黄から得られる硫酸
流れは次の通りです。
- 硫黄の物質量を求める
- 係数比をもとにSO2 → SO3 → H2SO4へ換算
- 98%硫酸としての質量を算出
この手順で計算すると、16kgの硫黄からおよそ50kgの98%硫酸が得られます。
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📘 接触法の反応と計算の流れ
📘 濃硫酸の安全な取り扱い
希釈するときは必ず「水に硫酸を少しずつ加える」ことが鉄則です。理由は以下の通りです。
- 水が少量だと、発生した熱が集中して危険
- 水蒸気が発生し飛び散る危険性がある
- 大量の水に硫酸を加えると熱が分散して安全
📘 工業的製法計算のモル換算の流れ
💡ヒント
💡ヒント:
逆に「硫酸に水を加える」と書いてしまう誤答が多いので注意。
📘 演習問題
問題1
硫黄32.0gから得られる98%硫酸の質量を求めよ。
問題2
目標:硫酸98.0gを製造するには硫黄が何g必要か。
問題3(応用)
SO2 44.8L(標準状態)から得られるH2SO4の質量を求めよ。
(いずれも係数比・モル計算を用い、途中式と検算を記載すること。)
📘 解答1:硫黄32.0 gから得られる98%硫酸の質量
1. Sの物質量(mol) = 32.0 g ÷ 32 g/mol = 1.00 mol
2. H2SO4の物質量(mol) = 1.00 mol
3. H2SO4の質量(g) = 1.00 mol × 98 g/mol = 98.0 g
4. 溶液の質量 = 98.0 ÷ 0.98 = 100 g
▶ 答え:100 g の 98%硫酸
📘 解答2:98%硫酸 98.0 g を作るのに必要な硫黄の質量
1. 質量(pure) = 98.0 × 0.98 = 96.04 g
2. 物質量(H2SO4) = 96.04 ÷ 98 = 0.980 mol
3. 物質量(S) = 0.980 mol
4. 質量(S) = 0.980 × 32 = 31.36 g
▶ 答え:31.4 g の硫黄
📘 解答3(応用):SO2 44.8 Lから得られるH2SO4
1. 物質量(SO2) = 44.8 ÷ 22.4 = 2.00 mol
2. 物質量(H2SO4) = 2.00 mol
3. 質量 = 2.00 × 98 = 196 g
4. 溶液質量 = 196 ÷ 0.98 = 200 g
▶ 答え:純H2SO4 196 g(= 98%硫酸 200 g)
📘 まとめ
硫酸の接触法は「流れと触媒」を理解すれば暗記に頼らずに説明できます。計算問題は「係数比で順番に換算する」ことが鉄則です。さらに、実験操作としての「水に硫酸を加える」安全ルールは入試でも問われやすいため、必ず整理しておきましょう。
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