
© TimVickers / Wikimedia Commons / Public Domain
https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3AIon_exchange_column.jpg?utm_source=chatgpt.com
イオン交換樹脂は、なぜ計算問題とセットで問われるのか
――Na⁺とH⁺の交換を「1:1」で理解する
イオン交換樹脂は、知識問題としてだけでなく、計算問題と組み合わせて出題されることが非常に多い分野です。
その理由は、イオン交換樹脂の本質が「量の交換」にあるからです。
仕組みを理解せずに暗記で処理すると、途中で計算の意味が分からなくなります。
一方で、交換の原理を押さえると、計算は驚くほど単純になります。
この記事では、イオン交換樹脂の働きと計算問題を、同じ一本の線で整理します。
1.イオン交換樹脂とは何をしている物質か
イオン交換樹脂とは、水溶液中の特定のイオンを、別のイオンと交換する高分子物質です。
重要なのは「除去する」のではなく、「交換する」という点です。
代表的な陽イオン交換樹脂では、次のような構造をもっています。
- 樹脂の骨格に −SO₃⁻ が固定されている
- その電荷を打ち消すために H⁺ が結合している
この状態が、イオン交換前の基本形です。
2.Na⁺とH⁺は、必ず1:1で交換される
陽イオン交換樹脂に塩化ナトリウム水溶液を通すと、次の交換が起こります。
- 樹脂側の H⁺
- 水溶液側の Na⁺
この二つがそのまま1:1で交換されます。
ここで押さえるべき点は次の一点です。
Na⁺が1個入ってきたら、H⁺が1個出ていく
価数が同じ1価の陽イオン同士なので、電荷のつり合いは常に保たれます。
この「1:1交換」が、すべての計算の出発点になります。
3.イオン交換の反応は、難しい反応ではない
反応式を書くように求められると、身構えてしまうことがあります。
しかし、やっていることは非常に単純です。
陽イオン交換樹脂(H⁺型)に塩化ナトリウム水溶液を通した場合、
- Na⁺が樹脂に結合する
- H⁺が溶液側へ出る
- Cl⁻はそのまま溶液中に残る
結果として、溶液中には塩酸が生じます。
反応の本体は「イオンの交換」であり、特別な化学反応を新たに覚える必要はありません。
4.計算問題で数えるのは「交換されたイオンのmol」
イオン交換樹脂の計算問題で重要なのは、どの量を数えているかを見失わないことです。
例えば、
- 0.10 mol/L の NaCl 水溶液
- 体積 10 mL
が与えられている場合、まず求めるべきは Na⁺ の物質量です。
n(\mathrm{Na^+}) = 0.10 \times 0.010 = 1.0 \times 10^{-3}\ \mathrm{mol}
Na⁺が 1.0×10⁻³ mol 交換されたということは、
- H⁺ も同じ 1.0×10⁻³ mol 放出された
ということになります。
5.流出液の濃度は、体積で割るだけ
次に注目するのは、流出液の体積です。
仮に、流出液が 100 mL であれば、
[\mathrm{H^+}] = \frac{1.0 \times 10^{-3}}{0.100} = 1.0 \times 10^{-2}\ \mathrm{mol/L}
となります。
ここで新しい操作は何もありません。
- 交換されたイオンの mol を求める
- 流出液の体積で割る
それだけです。
6.pHがすぐに決まる理由
流出液中の H⁺ は、塩化物イオンと結びついています。
つまり、溶液は塩酸です。
\mathrm{HCl \rightarrow H^+ + Cl^-}
H⁺ の濃度が分かれば、pH は機械的に求まります。
\mathrm{pH} = 2
ここで重要なのは、酸の種類を新たに考えていないという点です。
イオン交換によって生じた H⁺ を、そのまま扱っているだけです。
7.Ca²⁺が出てくるときに必要な修正
溶液が塩化カルシウム水溶液の場合、話は少しだけ変わります。
Ca²⁺ は 2価の陽イオンです。
そのため、次の対応関係になります。
- Ca²⁺ 1個 ↔ H⁺ 2個
つまり、電荷をそろえるために、
H⁺ が2個必要になる
この点だけを修正すれば、考え方自体は同じです。
- 価数を確認する
- 電荷がつり合うように交換数を決める
これで十分です。
8.イオン交換樹脂問題が「計算とセット」な理由
イオン交換樹脂は、暗記項目としてはそれほど多くありません。
それでも計算問題とセットで出題される理由は明確です。
- イオンの価数
- 物質量
- 濃度と体積
これらを、仕組みの理解と同時に処理できるかを見ているからです。
単なる公式処理ではなく、「何がどれだけ交換されたか」を追えているかが問われます。
9.まとめ:イオン交換樹脂で崩れないために
イオン交換樹脂の問題で押さえるべき点は、次の三つです。
- イオンは「除去」ではなく「交換」される
- Na⁺ と H⁺ は 1:1 で交換される
- 計算で数えているのは、交換されたイオンの mol
この三点がつながると、
イオン交換樹脂の計算問題は、特別な問題ではなくなります。
「今、どのイオンを何 mol 数えているのか」
この視点を最後まで保つことが、最も重要です。
この記事、どう感じましたか? 感想もらえると嬉しいです(^^)