――KClの生成エンタルピーとヘスの法則

出典:
Image: “Potassium-chloride-3D-vdW” by Hoa112008, Public domain, via Wikimedia Commons
化学のエネルギー計算は、数式だけを追いかけると途中で意味を見失いやすい分野です。
特にイオン結晶の生成エンタルピーは、**「どこでエネルギーをもらい、どこで放出するのか」**を整理できないと、一気に崩れます。
この授業では、KClを例にしながら、エネルギー図を使って考え方を整理していきます。
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まず確認:KClの生成エンタルピーが意味するもの
問題文には、次の情報が与えられています。
• KCl(固体)の生成エンタルピー:−436 kJ/mol
マイナスの値であることは、
KClができるときにエネルギーが放出される(発熱反応)
という意味です。
ここから先の計算は、
「どうやって −436 kJ/mol という結果にたどり着くか」
を分解して考えていく作業になります。
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エネルギー図は「状態の変化」を並べる図
エネルギー図では、物質の状態を**縦方向(エネルギーの高低)**で表します。
ポイントは次の通りです。
• 気体になるにはエネルギーが必要
• 結合を切るにはエネルギーが必要
• 安定な状態になるとエネルギーは下がる
KClの生成を考えるときも、
いきなり「KCl(固体)」を考えるのではなく、
途中の状態を一つずつ並べていきます。
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Cl₂は必ず「1/2」にする理由
今回扱うのは KCl 1 mol です。
一方、塩素は自然界では Cl₂ という分子として存在しています。
そのため、Cl₂をそのまま使うと数が合いません。
• KCl 1 mol → Cl 原子は 1 mol 必要
• Cl₂ 1 mol → Cl 原子は 2 mol
このズレを調整するために、
Cl₂ → 1/2 Cl₂
という処理が必要になります。
この「1/2」を忘れると、
結合エネルギーの計算がすべてずれてしまいます。
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格子エネルギーは「ゴールがイオン」である
ここからが、やや新しい考え方です。
格子エネルギーとは、
イオン結晶を、
気体状態のバラバラなイオンに分解するために必要なエネルギー
を指します。
重要なのは、
• ゴールが 中性原子 ではない
• ゴールは K⁺ と Cl⁻ である
という点です。
そのため、途中の状態として必ず次を考えます。
• K → K⁺ + e⁻
• Cl + e⁻ → Cl⁻
ここで「イオン化」と「電子のやり取り」が登場します。
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イオン化エネルギーと電子親和力の整理
ここは、高1で学んだ内容の復習です。
イオン化エネルギー
• 原子が 陽イオン になるときに必要なエネルギー
• エネルギーを吸収する(プラス)
例:
• K → K⁺ + e⁻
電子親和力
• 原子が 電子を受け取って陰イオンになるとき に放出されるエネルギー
• エネルギーを放出する(マイナス)
例:
• Cl + e⁻ → Cl⁻
この2つは、正誤問題でも頻出で、
混同すると一気に点を落としやすい部分です。
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数値をエネルギー図に入れていく
この授業では、次の値を確認しながら図に入れていきました。
• 生成エンタルピー:436
• イオン化エネルギー:89
• 結合エネルギー:240 × 1/2
• 電子親和力:349
• その他のエネルギー値
ここでは、符号をつける前に「絶対値」で整理します。
なぜなら、
符号は「どの経路で考えるか」によって意味が変わるからです。
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ヘスの法則が効いてくる理由
最後に使うのが ヘスの法則 です。
どの経路を通っても、エネルギーの総和は同じ
エネルギー図では、
• 直接下がる経路
• いくつか段階を踏む経路
どちらで考えても、
最終的なエネルギーの差は同じになります。
ここで重要なのは符号の扱いです。
• 上がるとき:すべてプラス
• 下がるとき:マイナス
途中で「下がっているように見える」部分でも、
選んだ経路によっては「上がる」として扱う必要があります。
この整理ができると、
格子エネルギーを含む計算でも迷いにくくなります。
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まとめ:この分野で崩れないために
イオン結晶のエネルギー計算で大切なのは、暗記ではありません。
• 状態を一つずつ並べる
• 原子か、イオンかを常に確認する
• エネルギーの出入りを図で整理する
• 最後にヘスの法則でつなぐ
この流れを守ることで、
数値が多少変わっても対応できる力が身につきます。
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