授業日 2025年9月8日
1. 凝固点降下と沸点上昇で問われること
凝固点降下と沸点上昇は、入試で次の2点がセットで問われます。
- 計算問題
温度変化 ΔT を求める/定数 K を求める/濃度や電離度を逆算する - グラフ問題
冷却曲線から 凝固点、過冷却、濃度の大小を読み取る
ポイントは、計算とグラフが別物ではないことです。
どちらも「溶液中の粒子数が増えるほど、温度変化が大きい」という同じ原理を使います。
2. まず押さえる基本式
凝固点降下と沸点上昇は、形がほぼ同じです。
- 凝固点降下 ΔT = Kf × M
- 沸点上昇 ΔT = Kb × M
ここで重要なのは M です。
M はモル濃度ではなく 質量モル濃度です。
3. 質量モル濃度 M の作り方
質量モル濃度は、次の定義で固定します。
- M = 溶質の物質量 mol ÷ 溶媒の質量 kg
失点の原因はだいたいこの3つです。
- 溶媒を gのまま入れてしまう
- 溶液の質量で割ってしまう
- 電解質で 粒子数補正を忘れる
図解:Mを作るときに見るべき2行
上段:molを作る 下段:kgで割る だけです。
| まずやること | 書く式 |
|---|---|
| 溶質のmolを出す | n = 質量 ÷ 式量 |
| 溶媒をkgで用意する | 溶媒(g) ÷ 1000 = 溶媒(kg) |
| 質量モル濃度を作る | M = n ÷ 溶媒(kg) |
4. 電離する溶質は粒子数を必ず数える
凝固点降下と沸点上昇は、溶液中の粒子数に比例して大きくなります。
電解質は電離により粒子が増えるため、見かけの濃度が増えます。
図解:粒子数が増えるイメージ
- 非電解質:1式量 → 粒子1個分
- 電解質:1式量 → 粒子が複数に分かれる
| 溶質 | 電離式 | 粒子数 |
|---|---|---|
| ショ糖 C12H22O11 | 電離しない | 1 |
| NaCl | NaCl → Na+ + Cl− | 2 |
| MgCl2 | MgCl2 → Mg2+ + 2Cl− | 3 |
| Th(NO3)4 | Th(NO3)4 → Th4+ + 4NO3− | 5 |
電離度が不明なときは、粒子数を固定せず、次のように「増える分だけ」を文字で扱います。
5. 典型計算:まずmol、次にkg、最後に粒子数
計算は毎回この順で固定すると安定します。
- 溶質の mol を出す
- 溶媒を kg に直す
- M = mol ÷ kg を作る
- 電解質なら 粒子数補正
- ΔT = K × M に代入
- 求めたい量を解く
図解:解法の流れ
mol → kg → M → 粒子数 → 代入
この順番を崩さないことが最大のコツです。
6. 例題1:NaCl の凝固点降下から Kf を求める型
NaCl水溶液で ΔT が与えられ、Kf を求める典型です。
図解:手順をそのまま式で並べる
- n = NaClの質量 ÷ 58.5
- 溶媒(kg) = 水(g) ÷ 1000
- M0 = n ÷ 溶媒(kg)
- NaClは粒子2個分 → M = 2M0
- ΔT = Kf × M → Kf = ΔT ÷ M
よくあるミス
- 水100gを0.1kgに直さず10倍ずれる
- 粒子数補正を忘れる
- ΔTを符号付きで扱い混乱する
変化量として 大きさで入れると安定します
7. 例題2:MgCl₂ の沸点上昇から元の濃度を逆算する型
ΔT と Kb が与えられ、濃度を逆算する問題です。
図解:逆算は「まずMを出す」が鉄則
- ΔT = Kb × M
→ M = ΔT ÷ Kb - MgCl2は粒子3個分
→ M = 3M0
→ M0 = M ÷ 3
最後の「÷3」を落とすのが典型ミスです。
逆算問題ほど、粒子数補正の意味が問われます。
8. 例題3:電離度を求める型 Th(NO₃)₄
電離度 α を含む問題は、粒子数を「αで増える分」として数式化します。
図解:粒子数は「1 + 増える分」で作る
Th(NO3)4 が電離度 α で電離すると、
- 電離しない分:1 − α
- 電離する分:α
→ Th4+ が α
→ NO3− が 4α
粒子の合計は
(1 − α) + α + 4α = 1 + 4α
よって、質量モル濃度を c とすると
- ΔT = K × c × (1 + 4α)
あとは与えられた値で α を解き、0〜1に入るか確認します。
9. グラフ問題:冷却曲線で必ず見る場所
冷却曲線では、見る場所がほぼ決まっています。
- 過冷却:いったん温度が下がりすぎる部分
- 凝固点:その後、温度が戻って 横ばいに近い区間の温度
- 濃度比較:凝固点が低いほど濃い
図解:冷却曲線のチェックポイント
- ① いったん下がる谷が過冷却
- ② 戻って横ばいに近い温度が凝固点
- ③ 溶液は純水より凝固点が低い
濃度比較は次の一文で処理できます。
凝固点降下が大きいほど粒子数が多い → 濃度が高い
10. 身近な例で理解を固定する
融雪剤
塩化カルシウムなどをまくと、溶液になった部分の凝固点が下がり、氷ができにくくなります。
粒子数が多い電解質ほど効果が大きいので、同じ質量でも効き方が変わります。
冷却パック
溶解が吸熱の物質では、周囲の熱を奪って冷たくなります。
凝固点降下とは別現象なので、「温度が下がる理由」を言葉で区別できるようにします。
11. まとめ:計算とグラフを同じ型で処理する
- ΔT = K × M の形をまず確認する
- M は 溶質mol ÷ 溶媒kg で作る
- 電解質は 粒子数補正を必ず入れる
- 電離度が未知なら 1 + 増える分で粒子数を式にする
- 冷却曲線は 過冷却と凝固点の横ばいを見る
- 凝固点が低いほど濃度が高い
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