合成高分子の分野は、用語や名称は覚えていても、構造式や結合の種類を説明しようとした瞬間に理解が崩れやすい分野です。本章では、代表的な合成高分子を例にしながら、
- 官能基
- 重合の仕組み
- 結合の種類
- 分子量・重合度の計算
- 構造と性質・用途の関係
を一本の流れとして整理します。
1. 合成高分子の計算で押さえるべき基本構造
合成高分子の計算問題では、**「何を1単位として数えるか」**が最重要です。
特に縮合重合では、単量体そのものではなく、繰り返し単位の質量を用いて計算します。
この考え方が曖昧なまま進むと、平均分子量や重合度の問題で確実に混乱します。
2. 生分解性プラスチックの代表例:ポリ乳酸(PLA)
2-1. 乳酸がもつ官能基
ポリ乳酸(PLA)は、生分解性プラスチックの代表例です。
その原料となる乳酸は、1分子内に次の2つの官能基を同時にもっています。
- カルボキシ基(–COOH)
- ヒドロキシ基(–OH)
このように1分子内に反応可能な官能基を複数もつ単量体は、自分同士で連結できるため、縮合重合を起こします。
出典:Wikimedia Commons
Author: Ben Mills
License: CC BY-SA 3.0
2-2. 縮合重合とエステル結合
乳酸のカルボキシ基とヒドロキシ基が反応すると、
- 水(H₂O)が1分子脱離する
- 分子同士が**エステル結合(–COO–)**でつながる
という反応が起こります。
この反応が繰り返されることで、ポリ乳酸という高分子が形成されます。
したがって、ポリ乳酸は
「エステル結合を主骨格にもつ縮合重合体」
として整理できます。
2-3. なぜ生分解性なのか
ポリ乳酸が生分解性をもつ理由は、その構造にあります。
- 主骨格がエステル結合である
- エステル結合は水や酵素によって加水分解されやすい
この性質により、ポリ乳酸は自然環境中で分解されやすく、
マイクロプラスチック問題への対策材料として注目されています。

出典:Wikimedia Commons
License: CC BY-SA
3. ポリ乳酸の計算:重合度を求める手順
3-1. 繰り返し単位の分子量
乳酸1分子の分子量は 90 ですが、縮合重合では水が1分子脱離します。
- 乳酸:90
- 脱離する水:18
したがって、繰り返し単位の分子量は
90 − 18 = 72
となります。
3-2. 平均分子量から重合度を求める
平均分子量が
3.6 × 10⁵
である場合、重合度 n は次の式で求めます。
n=繰り返し単位の分子量平均分子量 n=723.6×105=5000
したがって、
重合度は 5000 となります。
4. 合成高分子の総整理:構造から理解する
合成高分子では、名称だけでなく構造と結合の種類を結びつけて整理することが重要です。
4-1. 単量体と結合
- ナイロン66・ナイロン6
→ アミド結合をもつ縮合重合体 - ポリエチレンテレフタレート(PET)
→ エステル結合をもつ縮合重合体 - ビニロン
→ 原料と反応過程を含めて理解する必要がある高分子
「どの官能基が反応し、どの結合ができるか」
を軸に整理すると、暗記量が大きく減ります。
4-2. 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂
- 熱可塑性樹脂
加熱するとやわらかくなり、冷やすと再び固まる - 熱硬化性樹脂
一度硬化すると、加熱しても再成形できない
この違いは、**分子同士の結合状態(架橋の有無)**に由来します。
用途と結びつけて理解することが重要です。
5. 機能性高分子の代表例:イオン交換樹脂
5-1. イオン交換樹脂とは
イオン交換樹脂とは、
溶液中のイオンを、樹脂がもつ別のイオンと交換する機能をもつ高分子材料です。
水処理や化学工業で広く利用されています。

出典:Wikimedia Commons
Author: Hannes Grobe
License: CC BY-SA 2.5
5-2. 基本構造:架橋ポリスチレン
イオン交換樹脂の基本骨格は、
- スチレン → ポリスチレン
- ジビニルベンゼンによる架橋
からなる三次元の網目構造です。
架橋によって、樹脂は水中でも形を保ちます。
5-3. 官能基の導入と交換の仕組み
ベンゼン環の水素を、
- 酸性官能基(–SO₃H など)
- 塩基性官能基(–NR₃⁺ など)
で置換することで、イオン交換能が生まれます。
この官能基が、溶液中の Na⁺ や Cl⁻ などのイオンと交換されます。
6. まとめ:合成高分子を一本の線で理解する
合成高分子は、次の流れで整理すると理解が安定します。
- 官能基 → 重合反応 → 結合の種類
- 繰り返し単位 → 平均分子量 → 重合度
- 構造 → 性質 → 用途
- 骨格高分子 → 官能基導入 → 機能材料
この視点をもつことで、合成高分子は
暗記中心の分野から、構造で整理できる分野へと変わります。
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