熱化学の計算は、公式そのものよりも 「どの量を、どの単位で、どこまで換算するか」 が一度でもズレると、最後まで全部が崩れます。
とくに崩れやすいのは次の4点です。
- Q = mcΔT の m が「溶液全体の質量」になっていない
- mL → g の変換(密度1.0の扱い)を落とす
- 熱量 Q が「何 mol 反応したときの値か」を見失う
- 発熱なのに符号が+ になる(または逆)
今回の骨格は、溶解(NaOH)と中和(HCl+NaOH)を題材に、上の崩れポイントをまとめて潰しに行く内容です。溶解エンタルピーや中和エンタルピーの計算では、モル計算・熱量計算・比例換算・符号を同時に扱うことが強調されています。
まず結論:熱化学は「この型」だけで回せます
熱化学(溶解熱・中和熱)の基本は、毎回この2段構えです。
- 温度変化から熱量Qを出す
- Q=m×c×ΔT
- Qを mol に対応づけて ΔH(kJ/mol)へ換算する
- 「このQは何 mol のとき?」を確定
- 1 mol あたりに比例換算
- 発熱/吸熱で符号を確定
この「型」が見えた瞬間、個別問題の見た目が変わっても、解き方はほぼ固定になります。 熱化学に関する問題の解説_1004_10-54-19
ルール①:符号は“系”で決める(発熱ならΔH < 0)
熱化学の符号で混乱する原因は、「温度が上がった」という現象だけを見てしまうことです。
- 周囲(外界)の温度が上がる
→ 熱が外へ出た(発熱)
→ 反応している“系”のエンタルピーは減る
→ ΔH はマイナス
この符号規約は、溶解熱・中和熱どちらにも共通です。
ルール②:mLはgではない(密度が書いてある理由)
水溶液の体積が mL で与えられている問題は、ほぼ確実に次をさせたい問題です。
- 密度 1.0 g/mL(など)が与えられる
- 体積(mL)→ 質量(g) に変換してから
- Q=mcΔT の m(質量) に入れる
密度が書いてあるのは飾りではありません。「mLのまま突っ込んでQを出す」事故を防ぐための“罠解除”です。
例題1:NaOHの溶解エンタルピー(2.0 g → kJ/mol へ)
Step 1. まず「与えられた熱量」を確認する
NaOH 2.0 g が溶けたとき、熱量が 2.1 kJ 発生している(温度変化からQを出す)という状況です。
Step 2. NaOH 2.0 g を mol に直す
- 分子量:40.0
- 2.0 g → 2.0/40.0=0.050 mol(= 1/20 mol)
Step 3. 「0.050 mol のとき 2.1 kJ」→「1 mol のとき」を作る
- 0.050 mol のとき 2.1 kJ
- 1 mol はその 20倍
- 2.1×20=42 kJ/mol
Step 4. 発熱なので符号はマイナス
- 溶解エンタルピー:−42 kJ/mol
例題2:中和エンタルピー(“Qは何mol分?”が勝負)
中和で事故が起きる最大原因はこれです。
出したQが「1 mol の反応熱」だと思い込む
(実際は 0.050 mol 分のQ だった)
今回の骨格では、中和で得た熱量 2.814 kJ は 0.050 mol(=1/20 mol) 分の反応に対応していることを明示しています。
Step 1. 先に制限試薬を決める(1:1反応)
例として、NaOH 0.050 mol と HCl 0.10 mol なら、
- 少ないのは NaOH
- 反応する量 = 0.050 mol
- 生成する塩(NaCl)も 0.050 mol
Step 2. 温度変化から熱量Q(kJ)を出す
- まず 溶液全体の質量m を作る
- 水溶液は密度1.0として mL→g に換算して合算
- 比熱は水として 4.2 J/(g·K)
- Q=m×4.2×ΔT
- 例では Q ≒ 2.814 kJ(ここまでが“熱量”)
Step 3. Qを1 molあたりへ換算する
- 2.814 kJ は 0.050 mol 分
- 1 mol はその 20倍
- 2.814×20=56.28 kJ/mol
- 有効数字で 56 kJ/mol 程度に丸める 熱化学に関する問題の解説_1004_10-54-19
Step 4. 発熱なので符号はマイナス
- 中和エンタルピー:−56 kJ/mol(目安) 熱化学に関する問題の解説_1004_10-54-19
“−56 kJ/mol”は暗記でOK。ただし使い方が重要
中和エンタルピーは、条件でわずかに変動しても 概ね −56 kJ/mol 前後 が目安になります。ここを知っていると、計算の自己点検ができます。
たとえば計算結果が、
- +56(符号逆)
- −560(mol換算を二重にした)
- −5.6(倍率が1/10になっている)
- −106(設問が別条件で、反応量や前提が違う可能性)
のように「桁」や「符号」が不自然なら、途中のどこかで必ずズレています。
よくある失点ポイントチェックリスト(この順で見直す)
熱化学は、見直しも“固定ルート”で行くのが最速です。
- 制限試薬は先に決めたか(反応したmolが確定しているか)
- Q=mcΔT の mは溶液全体の質量か
- mL を g に直したか(密度の利用)
- 出したQは「何 mol 分」かを言語化できるか
- 1 mol あたりへ 比例換算したか
- 発熱はマイナスになっているか
- **単位(J/kJ, g, mol)**と有効数字が揃っているか
まとめ:熱化学は“センス”ではなく“手順”
- 熱化学は Q = mcΔT → mol換算 → 符号 の順で固定
- mL→g の変換と、Qが「何 mol 分か」の意識が勝負
- 中和エンタルピー −56 kJ/mol は暗記して“点検”に使う 熱化学に関する問題の解説
- 途中式・単位・有効数字を残すほど、解き直しが速くなる
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