この記事を読んでわかること
- アミノ酸の基本構造と両性の理解
- グリシンとアラニンの違いを説明できる
- 不斉炭素原子と鏡像異性体を判別できる
- 必須アミノ酸の意義と例を理解
- 等電点や電気泳動の計算に活用できる
要約
要約:アミノ酸はタンパク質の基本単位で、R基の違いが多様性を生む。
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📘 アミノ酸の基本構造
アミノ酸は一般式 R–CH(NH2)–COOH で表されます。
同一の炭素原子にアミノ基(–NH2)とカルボキシ基(–COOH)が結合している点が特徴です。
特にタンパク質を構成するアミノ酸は「αアミノ酸」と呼ばれ、中央の炭素に以下の4種類の置換基が結合しています。
- アミノ基 –NH2
- カルボキシ基 –COOH
- 水素原子 –H
- 側鎖 –R基
この R 基の違いによって 20 種類のアミノ酸が存在し、多様なタンパク質をつくり出します。
📘 グリシンとアラニンの比較
例として、グリシンとアラニンを取り上げます。
- グリシン (Gly, H2N–CH2–COOH)
R 基が水素原子であり、唯一不斉炭素原子をもたないアミノ酸です。そのため、鏡像異性体を持ちません。 - アラニン (Ala, H2N–CH(CH3)–COOH)
R 基がメチル基 –CH3 であり、不斉炭素原子を持ちます。そのため、D型とL型の光学異性体が存在します。
💡ヒント
💡ヒント:
入試問題では「唯一不斉炭素原子を持たないアミノ酸を答えよ」という形で出題されやすいです。
📘 不斉炭素原子と光学異性体
不斉炭素原子とは、4種類の異なる置換基をもつ炭素原子のことです。
アミノ酸の多くはこの条件を満たすため、光学異性体(D体・L体)が存在します。
天然に存在するタンパク質はすべて L体のアミノ酸 で構成されています。
📘 必須アミノ酸とその意義
体内で合成できず、食物から摂取する必要があるアミノ酸を「必須アミノ酸」といいます。
代表例:バリン、ロイシン、イソロイシン、リシン、フェニルアラニン、トレオニン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン。
💡ヒント
💡ヒント:
「必須アミノ酸=食事から補う必要がある」という視点で覚えると定着しやすいです。
📘 等電点と電気泳動
アミノ酸は両性電解質であり、水溶液の pH によってイオンの形が変化します。
- 酸性条件:正に帯電(–NH3+ が優勢)
- 塩基性条件:負に帯電(–COO− が優勢)
- 等電点:正負の電荷がつり合い、全体として電荷が 0 になる pH
等電点の違いを利用して、電気泳動でアミノ酸を分離することができます。
💡今日の学び×思考のヒント
- 不斉炭素原子の有無を見分ける
→ 置換基が4種類かどうかに注目。 - 等電点の概念は電荷のつり合い
→ 「電気的に中性になる点」と言い換えると理解しやすい。
📘 演習問題
演習1
グリシン:H2N–CH2–COOH(R基=H)
アラニン:H2N–CH(CH3)–COOH(R基=CH3)
解答:
グリシンは不斉炭素原子をもたない。
アラニンは不斉炭素原子をもち、光学異性体をもつ。
解説:
不斉炭素原子とは「4種類の置換基が結合した炭素」を指します。
グリシンでは中央の炭素に結合する置換基が H, H, NH2, COOH の4つ中で H が重複しており、不斉炭素原子は存在しません。
一方、アラニンは H, CH3, NH2, COOH と4種類すべて異なるため不斉炭素原子をもちます。
演習2
リシン(H2N–(CH2)4–CH(NH2)–COOH)はアミノ基を2つ、カルボキシ基を1つもつ。
解答:
等電点は酸性側にずれる(およそ pH ≈ 9 付近)。
解説:
アミノ酸の等電点は「正電荷と負電荷が釣り合う点」です。
リシンには –COOH が1つ、–NH2 が2つあるため、酸性条件では全体が正に帯電しやすくなります。そのため中性になるには比較的高い pH が必要で、等電点は塩基性寄りになります。実際の値はおおよそ 9〜10 です。
演習3
必須アミノ酸を5種類挙げよ。
解答(例):
バリン:分岐鎖をもつ。筋肉で重要。
ロイシン:分岐鎖アミノ酸でエネルギー代謝に関与。
イソロイシン:血糖値調整や筋肉維持に関与。
リシン:成長に不可欠。カルニチン合成にも関与。
トリプトファン:セロトニンなど神経伝達物質の材料。
解説:
必須アミノ酸は体内で合成できないため、食物から摂取する必要があります。
入試では「必須アミノ酸=食事から摂る必要がある」という理解が問われやすく、9種類すべて覚えておくのが理想です。
📘 まとめ
アミノ酸はタンパク質をつくる基本単位であり、R基の違いが性質の多様性を生み出します。
グリシンは唯一不斉炭素原子を持たないアミノ酸であり、アラニンは不斉炭素原子を持つ代表例です。
不斉炭素原子と光学異性体、必須アミノ酸、等電点と電気泳動は大学入試でも頻出のテーマです。今日学んだ視点で問題を整理すれば、混乱せずに解答できるようになります。
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