緩衝液の仕組み、酸・塩基の強弱、電離定数の近似計算、ルシャトリエの原理、リン酸の3段階電離までを扱った授業実況。入試頻出の平衡計算を暗算で処理するコツと演習問題を解説します。
読んだ後に学びがあったと感じた方は、♡をタップしていただけると嬉しいです。
【授業実況】2025/07/24 化学平衡と電離平衡の応用
本日の授業では、酸・塩基の強弱確認から始まり、緩衝液の仕組みと式の理解を深めました。
さらに、電離度が小さい場合の近似計算や平衡定数の応用、ルシャトリエの原理を確認しました。
最後に、リン酸と硫化水素の多段階電離を扱い、入試問題を解く力を養いました。
授業の導入と復習
講師は授業冒頭で、酸性・中性・塩基性の強弱に関する確認を行いました。
理解が不十分な場合は教科書149ページを参照し直すよう指示しました。
岐阜大学の問題を例に、緩衝液の本質は「どのイオンとどのイオンが結びつくか」を理解する点にあると強調しました。
緩衝液とpH計算の基礎
教科書182ページの緩衝液の式は暗記ではなく導出理解が必要です。
弱酸CH3COOHとその塩CH3COONaの溶液を例に考えると、電離平衡式は以下のように表されます。
CH3COOH ⇄ CH3COO⁻ + H⁺
平衡時濃度を用いて式を整理すると、酸の電離定数Kaと[H⁺]が結びつきます。
弱酸の濃度減少は小さいため近似処理が可能です。
これにより、H⁺濃度は次のように計算されます。
[H⁺] = Ka × (Ca / Cs)
ここでCaは酸、Csは塩のモル濃度を示します。
💡ヒント:CaとCsの区別を明確にすることが計算の安定性につながります。
近似計算と電離定数
次に講師は、立命館大学の入試問題(2022年改題)を例に解説しました。
α(電離度)が十分に小さいとき、平衡計算を近似で処理できます。
例えば酢酸の電離の場合、
Ka = Cα²
[H⁺] = Cα = √(C × Ka)
この近似を用いれば暗算でも計算できるレベルになります。
ルシャトリエの原理と平衡移動
講師は「Sがマイナスに大きくなる」といった記述から、ルシャトリエの原理を適用しました。
濃度・温度・圧力の変化に応じて平衡は変化し、その影響を弱める方向に移動します。
💡ヒント:pHと[H⁺]の大小関係を正しく理解しましょう。[H⁺]が減るとpHは大きくなります。
リン酸と硫化水素の多段階電離
授業後半ではリン酸(H₃PO₄)の3段階電離を扱いました。
各段階のKaの値が大きく異なるため、第一段階が最も進みやすく、第三段階はほとんど進みません。
H₃PO₄ ⇄ H₂PO₄⁻ + H⁺
H₂PO₄⁻ ⇄ HPO₄²⁻ + H⁺
HPO₄²⁻ ⇄ PO₄³⁻ + H⁺
講師は、このレベルの問題が解けるようになれば「高野さんの問題は卒業できる」と述べました。
対比として、硫化水素H₂Sの二段階電離も確認しました。
こちらが理解できないと応用問題で苦戦するため、必ず解けるようにする必要があります。
💡今日の学び×思考のヒント
- 緩衝液の式は暗記ではなく導出を理解する。
- 電離度が小さいときの近似計算は、入試で暗算処理を可能にする武器。
- ルシャトリエの原理では「影響を弱める方向」に平衡が移動することを常に意識する。
演習問題
📘 問題1(基礎)
0.030 mol/L の酢酸水溶液(Ka = 2.7×10⁻⁵)について、電離度αと水素イオン濃度を求めよ。
解答
Ka = Cα²
α = √(Ka/C) = √(2.7×10⁻⁵ / 0.030) ≈ 0.030
[H⁺] = Cα = 0.030 × 0.030 = 9.0×10⁻⁴ mol/L
📘 問題2(応用)
1.0 mol のH₂と1.0 molのI₂を密閉容器に入れ、平衡定数K = 64のとき、平衡時のH₂の物質量を求めよ。
解答
変化量をxとすると、
H₂:1.0−x、I₂:1.0−x、HI:2x
K = (2x)² / ((1.0−x)(1.0−x)) = 64
2x/(1.0−x) = 8 → x = 0.80
よってH₂ = 0.20 mol
まとめ
今回の授業では、酸・塩基の強弱から始まり、緩衝液の仕組みと近似計算、ルシャトリエの原理、そして多段階電離を扱いました。
特に、電離定数計算の近似処理は、難関入試の時間制限を突破する重要なスキルです。
リン酸や硫化水素といった多段階平衡に挑戦することで、化学平衡の理解は一段と深まります。
この記事、どう感じましたか? 感想もらえると嬉しいです(^^)