この記事を読んでわかること
- カルボン酸の二量体形成と沸点上昇の理由
- 酸無水物と縮合反応の違いを理解
- ギ酸と酢酸の特徴を整理できる
- マレイン酸とフマル酸の判別法を説明できる
- エステル生成反応の仕組みを理解
要約:カルボン酸は二量体形成や縮合反応を示し、エステル生成へとつながる。
「カルボン酸とエステルは複雑で整理できない…」そんな不安を解消します。
本記事では、ギ酸や酢酸といった代表例からマレイン酸・フマル酸まで、入試に出やすい性質と反応を整理し、図解で理解を深めます。
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カルボン酸の重要な反応
カルボン酸はそのままでは単純な弱酸に見えますが、分子同士が水素結合で結びつき「二量体」をつくります。
特に酢酸では、COのOとOHのHが互いに水素結合をつくり、融点や沸点を高める理由になります。
次に「酸無水物の生成」があります。カルボン酸同士が反応し、水(H₂O)が取れて酸無水物になるものです。
これは分子間で起こる場合と、分子内で起こる場合があり、結果として異なる生成物になります。
また、カルボン酸とアルコールの反応は「エステル化反応」です。ここでも水が脱離する「縮合反応」の一種であり、高校化学では「脱水縮合」とも呼ばれます。
💡ヒント:
「水が取れる」=縮合反応、と覚えると複数の場面でつながります。
ギ酸の性質と入試での狙われ方
ギ酸(HCOOH)は酢酸より強い酸性を示し、刺激臭のある液体です。
構造上の大きな特徴は「カルボキシ基 -COOH」と「アルデヒド基 -CHO」の両方を持つことです。
そのため、酸の性質だけでなく還元性も示し、銀鏡反応で陽性となります。
また、濃硫酸で脱水すると一酸化炭素が発生します。
入試では「カルボン酸なのに銀鏡反応を示す唯一の物質」として問われやすい典型例です。
酢酸の性質と身近な利用
酢酸(CH₃COOH)は食酢の主成分で、3〜5%の水溶液が調味料として使われます。
純粋な酢酸は氷点が高いため、常温でも凍ることがあります。この状態を「氷酢酸」と呼びます。
マレイン酸とフマル酸の違い(シス・トランスの入試頻出)
マレイン酸とフマル酸は、ともに C₄H₄O₄ の分子式をもちます。
違いは「二重結合をはさんだカルボキシ基の配置」です。
- マレイン酸:シス型(同じ側)
- フマル酸:トランス型(反対側)
シス型のマレイン酸は分子内で容易に脱水して無水マレイン酸を生成します。
この性質の違いが入試でよく問われます。
💡ヒント:
語呂合わせ「トラに踏まれたらマレに死す」
→ トラ=トランス形=フマル酸、マレ=マレイン酸=シス形
エステルの生成と実用例
カルボン酸とアルコールが脱水縮合してできるのがエステルです。
例:酢酸とエタノール → 酢酸エチル + H₂O
エステルは果実の香りや香料、可塑剤、医薬品原料などに広く利用されています。
実用例としては、爆薬として知られるニトログリセリンもエステル化合物です。
💡今日の学び×思考のヒント
- 「カルボン酸が銀鏡反応を示す例外」はギ酸だけ、と整理する。
- シス・トランス異性体は、分子式が同じでも性質が大きく変わる典型例。
- 縮合=水が取れる反応、と一括で覚えておくと計算問題に応用できる。
演習問題
📘 問題1
ギ酸の状態を答えよ。
【解答】液体である。
📘 問題2
ギ酸の酸性の強さを酢酸と比較せよ。
【解答】ギ酸は酢酸よりも強い酸である。
📘 問題3
ギ酸の構造的な特徴を述べよ。
【解答】カルボキシ基(-COOH)とアルデヒド基(-CHO)の両方を持つ。
📘 問題4
ギ酸が示す反応の例を1つ答えよ。
【解答】銀鏡反応に陽性を示す。
📘 問題5
酢酸の状態を答えよ。
【解答】液体である。
📘 問題6
3〜5%の酢酸水溶液は何と呼ばれるか。
【解答】食酢。
📘 問題7
「氷酢酸」とは何か説明せよ。
【解答】氷と酢酸の混合物ではなく、凍った状態の純粋な酢酸を指す。
📘 問題8
マレイン酸とフマル酸の違いを答えよ。
【解答】マレイン酸はシス型、フマル酸はトランス型である。
📘 問題9
マレイン酸とフマル酸の分子式は何か。
【解答】C₄H₄O₄。
📘 問題10
マレイン酸の性質として特徴的な反応を答えよ。
【解答】分子内で脱水して無水マレイン酸を生成しやすい。
まとめ
カルボン酸は水素結合で二量体をつくり、酸無水物やエステル化へと反応が広がります。
ギ酸は「酸性+還元性」という二重性で入試頻出。
酢酸は生活にも身近で、マレイン酸とフマル酸はシス・トランスの代表例です。
エステル化反応は有機化学の応用にも直結し、大学入試では必ず押さえておくべき分野です。
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