【授業実況】2025/04/30 アルデヒド・アルコール・油脂・合成洗剤の実験【高校化学】
この記事を読んでわかること
- アルデヒド/アルコールの基本反応(酸化・還元、代表的検出反応)
- 油脂・脂肪酸の基礎とけん化の流れ
- 石けんと合成洗剤の性質と硬水での違い
- 分子量計算と「二重結合の見抜き方」のポイント
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実験の振り返りと学習の狙い
この授業では、実験の振り返りを出発点に、アルデヒド・アルコール、油脂、石けんと合成洗剤の基礎を確認しました。
実験で観察した事実を言語化し、教科書の知識と結び付けることで、理解を定着させます。
実験プリントは清書よりも「気づきの記録」を重視します。
観察の要点は、アルデヒド臭、銀鏡反応の銀析出、フェーリング液の還元、二クロム酸カリウムの酸化色変化などです。
これらを手がかりに、座学のイメージを具体化します。
アルデヒドとアルコールの基礎反応
一次アルコールは酸化でアルデヒド、さらにカルボン酸に進みます。
二次アルコールはケトンになり、三次アルコールは酸化されにくいです。
色変化や析出は確認問題で狙われやすいので、反応名と観察結果を対にして覚えます。
脂肪酸と油脂の基本性質
📘 飽和・不飽和の違いと物性
飽和脂肪酸は二重結合を持たず、常温で固体になりやすいです。
不飽和脂肪酸は二重結合を含み、常温で液体になりやすいです。
飽和脂肪酸(例:ステアリン酸) 二重結合:0
骨格:—CH₂— が連続(折れ曲がり少)
物性:常温で固体になりやすい 例:バター
不飽和脂肪酸(例:オレイン酸) 二重結合:1以上
骨格:C=C により折れ曲がり
物性:常温で液体になりやすい 例:オリーブ油
見分け方のコツ
・式でHが2個少ないごとに二重結合が1つ増える
・液体=不飽和が多い、固体=飽和が多い(常温の目安)
📘 語呂合わせで覚える主要脂肪酸
授業で扱った「バス降りれん」で主要名を整理します。
- バ:パルミチン酸
- ス:ステアリン酸
- 降り:オレイン酸
- れん:リノール酸
「バス降りれん」対応表
バ → パルミチン酸(飽和)
ス → ステアリン酸(飽和)
降り → オレイン酸(不飽和・二重結合1)
れん → リノール酸(不飽和・二重結合2)
📘 けん化反応の流れ
油脂は、強塩基で加水分解してグリセリンと脂肪酸塩(石けん)になります。
油脂:
疎水性の長鎖を3本もつ + NaOH(aq) →
脂肪酸塩(石けん):RCOO⁻ Na⁺ 疎水基R と 親水基COO⁻/Na⁺ グリセリン(親水性)
石けんと合成洗剤の性質
📘 親水基・疎水基とミセル
石けん分子は、疎水基(炭化水素鎖)と親水基(—COO⁻)をもち、油汚れを包み込むミセルを形成します。
ミセル:外側が親水基、内側が疎水基。内側に油汚れを取り込み、水中へ分散させる。
📘 硬水での石けんカス
硬水ではCa²⁺やMg²⁺の影響で水に溶けにくい沈殿が生じ、洗浄力が低下します。
石けん:RCOO⁻ Na⁺ + 硬水中の Ca²⁺ / Mg²⁺ → 水に不溶の沈殿(石けんカス)
結果:界面活性成分が減少し、泡立ち・洗浄力が低下
📘 石けんと合成洗剤の比較
用途と環境面での違いを簡潔に整理します。
石けん と 合成洗剤 の比較
指標|石けん|合成洗剤
硬水での安定性|低い(沈殿が生じやすい)|高い(影響を受けにくい)
pHの性質|弱アルカリ性|配合に依存
生分解性|高い|製品により異なる
用途の傾向|皮脂・軽い汚れ|幅広い汚れ
分子量計算と二重結合の判断
📘 分子量計算の手順
分子量は、元素の個数に原子量を掛けて合計します。
① C・H・Oの個数を数える
② 各原子量を掛け算
③ 合計して分子量
例:C₁₆H₃₂O₂ → 16×12 + 32×1 + 2×16 = 256
📘 Hの個数から二重結合を見抜く
同じ骨格でHが2個少なくなると、二重結合が1つ増えます。
C₁₇H₃₅COOH(飽和) → Hが2個減 → C₁₇H₃₃COOH(二重結合1) → さらに2個減 → C₁₇H₃₁COOH(二重結合2)
二重結合の数=(飽和のH)−(与えられたH)の差 ÷ 2
📘 具体例で確認
授業で扱った見分け方を、表で確かめます。
分子式|Hの差|推定二重結合数|物性の目安
C₁₇H₃₅COOH|基準|0|固体より
C₁₇H₃₃COOH|−2|1|液体より
C₁₇H₃₁COOH|−4|2|液体(粘度低下)
今日の学び×思考のヒント
今日の学び×思考のヒント
- 実験の記録は「観察→考察→次に試す」のサイクルで書くと深まります。
- 脂肪酸はHの個数差で二重結合数を推定できます。分子式を見た瞬間に判断する癖をつけます。
- 石けんは条件で性能が変わります。硬水・温度・希釈を意識して観察します。
演習問題(全5題)
問題1
パルミチン酸(C₁₅H₃₁COOH)の分子量を計算しなさい。 (C=12, H=1, O=16)
解答 C₁₆H₃₂O₂ → 16×12 + 32×1 + 2×16 = 256
問題2
油脂のけん化で得られる生成物を述べ、石けんが汚れを落とす仕組みを簡潔に説明しなさい。
解答 生成物:脂肪酸塩(石けん)とグリセリン。
仕組み:石けんは親水基と疎水基をもち、ミセルを形成して油汚れを内側に取り込み水中へ分散させる。
問題3
次の分子式のうち、二重結合の数を答えなさい。
(a) C₁₇H₃₅COOH (b) C₁₇H₃₃COOH (c) C₁₇H₃₁COOH
解答 (a) 0、(b) 1、(c) 2(Hが2個減るごとに二重結合が1つ増える)
問題4
硬水で石けんの洗浄力が低下する理由を、親水基・疎水基の観点を含めて説明しなさい。
解答 硬水中のCa²⁺/Mg²⁺と反応して水に不溶の沈殿(石けんカス)が生じ、界面で働く石けん量が減るため。ミセル形成が妨げられ、油汚れを十分に取り込めなくなる。
問題5
「バス降りれん」を用いて、以下の空欄を埋めなさい。
[ バ ] ______酸(飽和) / [ ス ] ______酸(飽和)
[ 降り ] ______酸(不飽和・二重結合1) / [ れん ] ______酸(不飽和・二重結合2)
解答 パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸。
まとめ
実験の観察と有機化学の基礎を結び付け、脂肪酸の見分け方、けん化、石けんと合成洗剤の違いを整理しました。
分子式から二重結合の有無を素早く判断できると、計算や記述問題の精度が上がります。
同時に、使用条件による性質の変化も押さえておくと、実験での考察が具体的になります。
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