この記事を読んでわかること
- 極性の判断手順を理解できる
- 分子全体の電荷分布を説明できる
- カルボン酸の具体例を身近に理解
- 大学入試での出題意図を把握
- 誤解しやすい点を避けられる
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導入
要約:カルボン酸は身近な酸の代表例である。
「カルボン酸って覚えるだけで終わる…」そんな不安を解消します。
極性の考え方を整理しながら、蟻酸や乳酸などの具体例を押さえると、大学入試の有機化学がクリアに理解できます。
本論
📘 極性の概念と判断手順
極性は、原子間の電子の偏りと分子全体の対称性の二段階で考えます。
まず、フッ素や酸素のように電子を強く引きつける原子がある場合、結合に偏りが生じます。
同じ原子同士(例:C–C)では偏りは生じません。
次に、分子全体を見ます。
左右対称で偏りが打ち消し合っていれば、分子全体は無極性です。
一方、対称性が崩れると極性分子になります。
💡 学びのヒント:
極性=「部分の偏り」と「全体のバランス」をセットで考える。
CO₂は無極性、H₂Oは極性。この比較がよく出題されます。
📘 カルボン酸の具体例と日常生活
カルボン酸(–COOH基を持つ化合物)は、私たちの身近な生活に存在しています。
蟻酸(HCOOH):アリに含まれる刺激のある酸
乳酸(CH₃CH(OH)COOH):ヨーグルトの酸味成分
シュウ酸((COOH)₂):カタバミに含まれる酸
酒石酸(HOOC–CHOH–CHOH–COOH):ブドウに含まれ、酒石として析出
これらは「名前+由来」でセットで覚えると、暗記が定着します。
📘 演習1:極性分子かどうかを判断せよ
次の分子について、極性分子か無極性分子かを答えよ。
- (1) 二酸化炭素 CO₂
- (2) 水 H₂O
- (3) 四塩化炭素 CCl₄
- (4) 塩化水素 HCl
解答の流れ
- 結合の偏りを確認(電気陰性度の差があるか)。
- 分子全体の対称性を確認。
解答例
- (1) CO₂:C=O結合は偏るが直線構造で打ち消し → 無極性
- (2) H₂O:O–H結合は偏る。折れ線構造で打ち消し合わない → 極性
- (3) CCl₄:C–Clは偏るが正四面体で対称 → 無極性
- (4) HCl:H–Clの電気陰性度差 → 極性
💡 つまずきポイント
「偏りがある=極性」と決めつけないこと。必ず「全体の形」を見る。
📘 演習2:カルボン酸の身近な由来を答えよ
次のカルボン酸について、主な由来を答えよ。
- (1) 蟻酸 HCOOH
- (2) 乳酸 CH₃CH(OH)COOH
- (3) シュウ酸 (COOH)₂
- (4) 酒石酸 HOOC–CHOH–CHOH–COOH
解答例
- (1) アリの毒液
- (2) ヨーグルト(発酵乳)
- (3) カタバミ(シュウ酸塩を含む植物)
- (4) ブドウ(果実に含まれる酸)
📘 演習3:カルボン酸の酸性比較
次の2つのカルボン酸の酸性を比較し、どちらが強いかを答えよ。
- (1) 酢酸 CH₃COOH
- (2) ギ酸 HCOOH
考え方
酢酸はアルキル基(CH₃–)が電子供与性。–COOH基の電離を妨げる。
ギ酸は水素原子(–H)のため電子供与性がなく、より強酸。
答え
ギ酸 > 酢酸
💡 入試ポイント
「電子供与性基がつくと酸性が弱まる」「電子吸引性基がつくと酸性が強まる」という一般則を使う。
📘 演習4:中和反応と計算
0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液 50.0 mL を中和するのに必要な酢酸 CH₃COOH の物質量を求めよ。
解法ステップ
反応式:
CH₃COOH + NaOH → CH₃COONa + H₂O
NaOH の物質量:
n = 0.10 × 0.0500 = 0.00500 mol
反応比は 1:1 → 酢酸も 0.00500 mol 必要。
答え
必要な酢酸の物質量:0.00500 mol
💡 誤答例
モル濃度 × 体積を「そのまま mL」で計算してしまい、1000 倍ずれてしまう。体積は必ず L(リットル) に直す。
📘 演習5:入試頻出・構造決定問題
分子式 C₂H₄O₂ をもつカルボン酸を示せ。
解法
C₂H₄O₂ で酸素原子が2個 → カルボキシ基(–COOH)を疑う。
可能性のある構造式:CH₃COOH(酢酸)。
答え
酢酸 CH₃COOH
まとめ
📘 今回のポイント
- 極性は「結合の偏り」と「分子全体の対称性」の2段階で判断する。
- カルボン酸は、蟻酸・乳酸・シュウ酸・酒石酸など、日常に身近な例が多い。
- 入試では「官能基と具体例」を問う出題が多く、生活との結び付けが理解の助けになる。
📘 まとめ(演習込み版)
- 極性の有無は「結合の偏り+分子の形」で判断。
- カルボン酸は日常に多く存在し、名前と由来をリンクすると覚えやすい。
- 酸性比較では「置換基の電子供与性/吸引性」を考える。
- 中和反応は必ずモル計算で整理。
- 分子式問題は「官能基候補」を意識する。
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