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化学の問題は、どこで崩れるのか――酸塩基・熱化学に共通する「読み取り」から始める

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はじめに

化学の問題が解けないとき、原因は計算だと思われがちです。

しかし、演習の様子や答案を見ていくと、計算の前に思考が崩れていることが少なくありません。

問題文や図を見たときに、必要な情報が拾えていない。

拾えたとしても、何をどう使えばよいかが整理されない。

そのまま計算に入ってしまい、途中で迷いが生じ、時間が切れ、後半で失点が増える。

この講義では、酸塩基・中和の演習と、熱化学の基礎的な解法確認を通して、化学の問題解決を「ひとつの手順」として扱います。扱うのは、次の四段階です。

• 読み取る

• 引き出す

• 置き換える

• 数で考える

この流れは、特定分野のテクニックではなく、化学全体に通用する「思考の順序」です。講義の前半では演習と答え合わせを行い、特に問題3番を題材に「読み取り」の実体を確認します。後半では熱化学に移り、反応タイプの判定と、発熱・吸熱、生成エンタルピーなどの要点を整理し、最後に思考OSとしてまとめます。

1章 演習と時間管理――「素直な問題」で差が出る理由

演習の途中経過を確認すると、開始から約17分の時点で、すでに解き終えている人がいました。一方で、全体としてはもう少し時間が必要な状態でした。進度の差は、能力差というよりも、手順の差として現れます。

出版社の想定は「19分で大問5まで」です。しかも、この問題集は、悪い意味で意地悪な問題ではなく、いわゆる「素直な問題」を選んでいます。20分程度あれば、全問解けていておかしくない、という前提が置かれています。

それでも後半で誤答が増えます。特に、後半になるほど「時間切れ」が増える傾向が見えます。知識が足りないというより、途中のどこかで立ち止まり、計算まで到達できなくなる、という形で失点が増えていきます。

答え合わせでは、板書された答えに合わせて自己採点を行います。今回の並びは「4553233」でした。採点が終わったら、学年共有ノート内のアンケートに回答する、という流れになります。全問正解だった人は、熱化学の問題プリントに進みます。

実際、全問正解は2名でした。ここから読み取れるのは、難問が解けないという話ではありません。「素直な問題」で崩れている、という事実です。だからこそ、手順を整える価値があります。

2章 問題3番――「読み取り」が問われる現代型

演習の中で、特に簡単に解説が入ったのが問題3番です。これは約10年前に実際に出題された問題ですが、内容は早くも「今っぽい」問題です。つまり、単なる計算ではなく、読み取りが中心に置かれています。

この問題が問うている力は二つです。

• その場でしか得られない情報を読み取れるか

• 読み取った情報を、計算に使える形に整理できるか

ビュレットの目盛りは、最初が8.80 mLを指しています。終了時の読み取りは24.80 mLです。これを「204.80」と読み取るような表現も出てきますが、重要なのは、最初と最後の差を取って使用体積を求めるという一点です。

必要なのは、使われた体積です。

したがって、

• 開始:8.80 mL

• 終了:24.80 mL

• 使用体積:16.00 mL

になります。

この16.00 mLを取り出せた時点で、問題の中心は終わっています。ここがハイライトです。つまり、計算以前に、何を読み取らなければならないかを見抜けるかが勝負です。

化学の問題では、数字が多いほど、全部使いたくなります。しかし、全部使う必要はありません。「今、この場でしか読み取れない情報は何か」を見つけることが先です。ここを外すと、公式を知っていても解けません。

3章 置き換えの実体――「mol×価数」に落とす

読み取った後は、置き換えです。酸塩基・中和の多くの問題では、やっていることは変わりません。

• それぞれのmol

• それぞれの価数

• それらを掛け合わせる

つまり、「mol×価数」の比較に落とし込めば進みます。

計算の工夫としては、割り算を最後まで引きずらず、見える形で整理しながら進めることが有効です。分子と分母に線があるだけで見やすくなるので、早い段階で形を整えます。約分も、早くやり過ぎない方が見やすい場合があります。

たとえば、16と20が見えたとき、そこで整理して終わりにできます。細かい小数計算に入らず、形で処理してしまう、ということです。

この問題では、最終的に「25分の2」という形に到達します。ここで問われているのが「1000分のいくつか」というような形であれば、25分の2をそのまま割り算せず、100分の8に変換して目視で選択肢に当てることができます。

• 25分の2

• これを40倍して

• 100分の8

このように、計算を減らす方向で動きます。選択問題では、最後の計算をしないで済む場面が少なくありません。近い数値があれば、それを選ぶ。計算で勝負しないで、見通しで勝負する。そういう設計が可能です。

4章 「引き出す」が遅いと時間が尽きる

このあたりから、問題の難しさは計算ではなくなります。

時間内に正確に解く、という条件がつくと、決定的になるのは次の二つです。

• 読み取り

• 引き出しの配置(必要知識がすぐ出るか)

酸塩基の問題では、結局ほとんどが「電離して出てきたH⁺のmol」と「OH⁻のmol」だけで解けます。ここに戻せるかどうかで、多くの問題の見通しが決まります。

しかし、人は焦ると、いきなり式を使いたくなります。ここで講義が強調しているのは、式を使う前に立ち止まることです。

• そもそも今、何を読み取らなければならないのか

• 今回の話題は何なのか

• この場でしか読み取れない情報は何なのか

• 置き換えないといけないものは何なのか

この確認ができれば、共通テストの形式にも対応しやすくなります。

また、問題によっては知識の引き出しが必須になります。たとえば、CO₂が水に溶けると炭酸になる、という事実です。これは覚えていないと、問題が成立しません。必要な知識は、引き出しの奥ではなく、手前に置いておく必要があります。

時間制限がある試験では、「考えて思い出す」時間がそのまま失点につながります。引き出す速度は、訓練で変わります。

5章 熱化学は「反応タイプ」を当ててから始める

後半は熱化学です。ここでも、やり方は同じです。

熱化学で最初にやるべきことは、計算ではありません。

まず、問題文や図から「どんな反応か」を確認します。主に次のタイプが出ます。

• 燃焼

• 中和

• 溶解

• 生成(合成)

• 分解

個別入試になると、より複雑なエネルギー図が出たりしますが、共通テストレベルでは燃焼や中和が多い、という見通しが立ちます。

次に、与えられている値に下線を引きます。熱化学では、グラムや体積(L)が多いはずです。ここで考えるのは、「何を求める問題なのか」です。

熱化学の問いは、大きく二つに分かれます。

1. 1 molあたりの反応熱を求める

2. ある量(何g、何L)での発熱量・吸熱量を求める

ほとんどは熱量(kJやJ)の話です。ただし、温度変化から始まる例もあります。その場合は、熱量の式に乗せます。

• q = mc\Delta T(あるいは q = Cm\Delta T)

この式が使えるようにしておく、という指示も入ります。

6章 発熱と吸熱――符号は「外に出るか、もらうか」で決める

反応タイプが見えたら、発熱か吸熱かを判定します。

• 発熱反応:ΔHはマイナス

• 吸熱反応:ΔHはプラス

これは、熱がどこへ移動するかで決まります。

発熱は「熱が外へ出ていく」話です。自分のエネルギー(エンタルピー)は下がるのでマイナスになります。吸熱は「周りから熱をもらう」話です。自分のエンタルピーは上がるのでプラスになります。

燃焼は基本的に発熱反応です。熱は外へ出ます。したがってΔHはマイナスです。完全燃焼であれば、有機化合物はCO₂をほぼ必ず生成します。不完全燃焼の場合は注釈があるので、そのときだけ注意します。

また、結合エネルギーは必ず吸熱です。分子をバラバラの原子にするために必要なエネルギーだからです。この「必ず」の感覚は、引き出しの手前に置いておく必要があります。

さらに、エネルギー図を書く場合、

• 吸熱反応は下から上へ(上向き)

• 発熱反応は上から下へ(下向き)

という矢印で整理します。基本ですが、迷いが出るところなので、最初に確定させます。

7章 生成エンタルピー――「差」を取る発想

講義内では「生成熱」と言いかけてから、正確には「生成エンタルピー」であると訂正が入りました。この概念は苦手な生徒が多いので、ここを練習する価値があります。

生成エンタルピーは、定義が重要です。

• 1 molの化合物ができる反応

• 左辺が単体のみ

この条件が入ります。

そして、反応熱を求める計算では、生成エンタルピーの差を使う式が頻出です。講義では「反応物側と生成物側の差を取る」という形で触れられました。共通テストでも、この式を使う問題が出た、という指摘が入ります。

つまり、熱化学も最後は計算ですが、計算以前に

• 何の反応か

• 何を求めているか

• どの定義を使うか

を固めてしまうことが先です。ここが固まれば一本道になります。

終章 思考OS――「読み取り→引き出す→置き換える→数で考える」

最後に、この90分講義で繰り返し強調された思考の流れを、思考OSとして整理します。ここでのOSは、テクニック集ではなく、問題に入ったときの思考の起動順序です。扱った分野(酸塩基・熱化学)に限って、講義内の内容だけで提示します。

OS-1 読み取る(何の話で、どこがハイライトかを確定する)

まず、問題文や図から「今回の話題」を確定します。

• 酸塩基・中和なら:どの酸・塩基が何mL、何mol/Lか

• 滴定なら:ビュレットのどの目盛りを読むべきか

• 熱化学なら:燃焼/中和/生成/分解/溶解など反応タイプは何か

• 熱化学なら:与えられた値はgかLか、kJか、温度変化か

ここで最重要なのは、「この場でしか読み取れない情報」を拾うことです。問題3番でいえば、開始8.80 mLと終了24.80 mLから使用体積16.00 mLを出すことがハイライトでした。

OS-2 引き出す(頻出知識を「手前」に置く)

次に、必要な知識を即座に引き出します。時間制限があると、ここが遅いほど失点します。

• 酸塩基・中和:多くはH⁺とOH⁻のmolで処理できる

• CO₂が水に溶けると炭酸になる、などの必須知識

• 熱化学:燃焼は基本発熱、結合エネルギーは必ず吸熱

• 発熱はΔH<0、吸熱はΔH>0

• 温度変化型なら q = mc\Delta T を使う

「覚えていないと解けない」知識は、引き出しの奥ではなく手前に置きます。講義はこの重要性を繰り返しています。

OS-3 置き換える(計算可能な形に落とす)

読み取った情報と、引き出した知識を、計算可能な形に置き換えます。

• 酸塩基・中和:H⁺のmolとOH⁻のmolに置き換える

• 滴定:使用体積(差)をまず確定し、molへ変換する

• 中和計算:mol×価数の形に揃える

• 熱化学:求めるのが「1 molあたり」か「実際の量」かに合わせて立式する

• 生成エンタルピー:定義に従って反応式・条件を整える

置き換えができると、計算は一本道になります。

OS-4 数で考える(計算は「減らす」方向で進める)

最後に数です。ここで重要なのは、計算を“頑張る”のではなく、計算を“減らす”ことです。

• 早い段階で形を整え、見える約分をする

• 選択問題なら、最後まで割り算せず、見通しのよい形に変換する

• 例:25分の2 → 100分の8

• 近い選択肢があるなら、目視で当てにいける形にする

講義で示されたのは、計算の上手さというより「計算の設計」です。

おわりに

この講義が扱った範囲では、酸塩基も熱化学も、結局は同じ順序で進みます。

• 読み取る

• 引き出す

• 置き換える

• 数で考える

この順序が乱れると、素直な問題でも途中で崩れ、後半で時間切れが増えます。逆に、順序が安定すると、計算は短くなり、ミスも減り、時間が残ります。

配布された熱化学プリントは家庭で取り組みます。酸塩基の追加プリントを希望する場合は後日受け取れます。講義の中で十分に解説しきれなかった部分があっても、問題に向かうときの考え方そのものは、この90分で整理されています。

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